こんにちはescapeです。
先週末に芥川賞作家の西村賢太氏の訃報がありました。
最近は、少々私が好んでいる作家などがよく亡くなられているので
非常に残念です。西村さんは年齢的は私より少し上ではありますが、
ほぼ同年代です。よく破滅型作家と形容されることもあります。
たまにテレビのコメントなども正直に発せられ降ろされ
たり、割と出版社やテレビ局とも揉めたりもするのでその辺もあったのでしょう。
私も、10年ほど前に西村さんが芥川賞を受賞した時に、コメントで「これから
風俗に行こうとしてました」というのを聞いて面白い人だなと率直に思いました。
「苦役列車」という作品で受賞をされたのですが、映画化までした作品でもあり
ました。西村さんの本は「私小説」というジャンルで、一応フィクションであり
ますがほぼ、自分の部分を重ね合わせ書いているところです。主人公の名前も
賢太に近い貫多という名前で出てきます。
彼は中学卒業後、進学せず家も飛び出し肉体労働の日払いなどで生計を
たてながら小説を書いていた人です。
本人は、色々このことに対する差別的な待遇は受けていながら、十分理解も
しているはずなんですよね。ある、テレビ番組で女医を始めとした学歴に
対する重要性を理解している人達の討論番組のようなものがありました。
ここで西村さんは、全く中卒でも今まで困らなかったし学校の勉強は役に
たたないと話をしていました。
当然、誰が見てもそれはここまでくるのに大変というのは察しがつく中で、
それを言える権利といういうのは、本人でしかなく、あえて大変でしたと
言わないところに「意地」と「プライド」があったのでしょう。
また、「高校中退」というのも最終学歴は「中卒」になるのですが、
本人は高校すら受けなかったので私は「純粋な中卒」だから、高校中退と
一緒にしてもらうと気に入らない位の笑える話も疲労をしていました。
また中卒という事への反動が、どこか文章にもでていたようにも思いました。
彼の作品には、度々難しい漢字や語句がでてきます。学校でも教えないようなこのような
難しい言葉を自力で学習しながら覚えていたんだなという事と、どこかで
自分は中卒だから馬鹿にされたくないという思いもあり、このような言葉
を多用していたのかもしれません。また、彼が尊敬しお手本にしている作家で
藤沢氏という方が小説にもでてきます。大正頃に「私小説」を書いていたよう
なのですが、作家としてはほぼ無名に近い人をリスペクトしていたのも彼独自
の方針なのでしょうが。恐らく、その本から学ぶ事で色々な語彙を知るように
なったのではないかと思います。本の内容自体は、ご自身の20代くらいの生活
が中心に書かれ、ほぼ読む側からすれば「クズ人間」という生き様を書い
ています。何かのインタビューで西村さんも、「これより下の人間はいな
いだろう」「まだ自分はまし」というある種読む側に自信を持ってもらうように
書いたような事を話していたのを記憶しています。
しかしながら、趣味で書くのは別にして恐らく書き始めて、何年も継続して
芥川賞に選ばれるようものを書き続ける精神力はすごいものと思います。
きっと本人の中では、賞をとる前もとった後も変わらない部分がほとんど
という意味で、冒頭の受賞した際の風俗どうのという話になったのでは
ないかと思います。もう亡くなっていますが、青木雄二という漫画家は
「ナニワ金融道」で一躍人気作家になりましたが、この人も40過ぎに
花開く前は、やはり底辺バイトをやり続けながら応募をし続けたそうです。
西村氏も賞をとったのが40過ぎという事を考えると、通常であれば年齢的にも
厳しいなという諦めがでてくると思います。そこを押し切りやっていく力という
のは非常に勉強になるものです。私もですが、やはり本業の仕事をしながら
このブログでさえも続けるだけでそれなりにエネルギーはかかります。
ましてや、肉体労働をした後に体も疲れている中、いつお金になるか
わかないものを持続的に書いていくエネルギーというのは相当なもの
ではなかったのではないでしょうか。やはり、その辺の努力はみせたく
ないのか、あまり語っている部分はありません。そこも、きっとご自身
なりの「プライド」と「意地」なのでしょう。
そう考えると、まだ私たちにも「できる努力」というのは、かなり
残されているのではないかと思う所です。私も
まだ自分なりの「意地」と「プライド」を持ち続け
やっていこうと再度思い知らされた訃報でした。
ご冥福をお祈りいたします。
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